子どものこころの病気

自閉症スペクトラム障害(ASD)

1)社会性の障害
 他人と情緒的な相互交流を行うことが困難なことが基本的な特性です。幼児期には同世代の子への無関心、人よりも物に関心を示します。小学生になってからは他の子と親密な関係や友人関係を構築することの困難さが特徴です。彼らの社会性はゆっくりとですが変化しながら発達していきます。知的に高い人たちは、学習と経験をもとに自分の特性を知性や知識で補います。

2) コミュニケーション障害
 コミュニケーションには言葉、表情、態度などで思いや考えを表現するというアウトプット、聞くこと、相手の表情や態度から理解するというインプットがあります。 学校や会社では、こうしたアウトプットとインプットのやりとりでミュニケーションが行われます。
 ASDの人は、学校や会社でのコミュニケーションの方法が独特であるのが特徴です。専門用語や四文字熟語などを多用していも、それは表面的であったりします。音程、抑揚、早さ、リズムに偏りがあり話し方が単調であったり、リズムが不自然だったり、自分の好みのことを一方的に話し続ける特徴もあります。 “インプット”については、言葉を字義通りに受け取ってしまう(文脈理解や言葉の比喩などがわからない→デジタル的交流)、言葉の裏を読むことが苦手、相手の発した言葉の中で自分の気になった部分のみが気になり、それに感情的になるといった特性もあります。

3)イメージすることの障害 
 ものを並べる、特定の物を集める、同じ行動を繰り返す、変化を嫌うといった“こだわり”の行動は、イマジネーションの障害が背景にあります。将来や明日に起こることを想像することが難しく、見通しを持つことが出来ないため、同じパターンを繰り返し行うほうが安心できます。自分の好みの物を集めることや揃えることを好みますが、収集したものを本来の目的ではなく、たた蒐集することだけで満足してしまいます。イメージの共有は苦手なことが多いのですが、そこに具体的な実物、写真、絵、文字などの視覚情報あると、イメージを他者と共有しやすくなるのが特徴である。

4)感覚の特異性(この特性は家族や親によって気がつかれることが多い)
ASDは、“感覚”刺激への反応に偏りがあることが多く、聴覚、視覚、味覚、臭覚、触覚、痛覚、体内感覚などすべての感覚領域で鈍感さや敏感さが生じます。

聴覚:ある音には敏感に反応するが、別の音には鈍感であるなど、音源の種類によっても反応が異なることが多いです。工事現場や花火の音や車の走る音に対し苦痛を感じ耳をふさぐ子どもが大声で話しかけられても全く気がつかないといった状況もあります。

視覚:手をかざしたり、横目をしてみたり、視覚的な刺激に対する独特の感じ方がある。ミニカーを走らせて楽しむよりも、タイヤの回る部分に注目して見ることに熱中し、横目で物を見る感覚刺激を求めるなどの行動がみられることが多々あります。隙間からものを見ることを好む人もいます。

味覚:味、温度、固い食べ物、舌触りなどに過敏であったり、逆に鈍感だったりします。

臭覚:香水、消毒の臭い、体臭など特定の臭いを極端に嫌がったり、逆に人や物の臭いを頻繁に嗅ごうとすることもあります。

触覚:人から触られることを嫌がったり、軽く触られただけでも叩かれたように感じ、怒り出す人もいます。特定の感覚刺激を好む場合もあり、自分で頭を叩くなどの自己刺激行動を起こすこともあります。

温冷感覚:暑さ寒さに鈍感で低温火傷になったり、少し暑いとクーラーをつけることに固執することがあります。

これらの感覚の特異性については、ストレスが高まったときにより強く出ることもあります。感覚の特異性は、わがままと受け取られがちですが、感覚情報処理の偏りが理由です。

治療と支援
 早期発見と早期支援が重要です。生き辛さや生活の困難感、友人関係の乏しさなどを抱えやすいために、家族と学校と医療と福祉のコラボレーションが重要になります。ASDの特性を周囲が理解して、適応を高めて、二次的な問題(不登校、問題行動、ひきこもり、うつ状態、混乱、被害妄想など)を予防する必要があります。
 ASDの認知特性や行動特性に劇的な効果がある薬物はなく、不安を抑制したり、衝動をコントロールするなどの対応が中心になります。また、4-30%にてんかんの大発作を合併します。
薬物療法の文献→こちら

 自閉症スペクトラム障害という診断基準を満たさなくても、こうした傾向がある人は、自閉症スペクトラムと呼ばれます。生きづらさという点では同じ体験をしています。
  参考 https://www.ypdc.net/ 横浜発達クリニックサイト(内山院長)を参考にさせていただきました。
 

注意欠陥多動性障害(ADHD)

 ADHDは子どもで問題になることが多い疾患であり、この疾患は多動、衝動性、不注意が主症状です。
 これらの症状のために幼児期より怒られることが多く、自己評価が非常に低くなってしまっている場合が多いです。
 少しでもこの疾患を疑わせる所見がある場合には、早めにご相談ください。
 内服での治療も可能です。
 また治療教育も有効な場合があります。

1. ADHDの疾患特性(学童期のADHDの子どもの特徴) 授業中の立ち歩き、ちょっとしたことでむきになり口より先に手が出てしまう 注意転動性亢進により課題を達成できない、やるべき課題にぎりぎりまで取り掛かれない、周囲の状況がつかめず友達と上手く遊べない、要領が悪い、忘れ物が多い、衝動性 引っ込み思案
このようなことで困っている場合、ADHD症状の可能性があります。

2. ADHDの診断基準(DSM-IV-TRでの診断基準) 不注意の項目、または衝動性-多動性の項目がそれぞれ6項目以上(不注意優勢型、多動-衝動性優位型、混合型) 多動性-衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、6ヶ月以上持続している これらの症状による障害が2つ以上の状況(ex.学校と家庭)において存在する  7歳以前から存在し、それらの症状は現在まで継続していることです。また自宅、学校、その他の場所を含め、複数の場所で問題となっている必要があります。  (和光クリニックホームページより)
 

不登校や保健室登校

不登校や保健室登校は病名ではありません。ですから,こころの状態が健康なのか、病気なのか,発達障害のような問題あるのか、家族関係の影響なのかを判断する必要があります。毎日子どもに接する養護教諭に相談するのがよいと思います。そして、スクールカウンセラー、担任、家族が一緒に子どもを理解して対応することです。
 専門医の診察を希望する場合には来院ください。その際、学校からの情報があることが望ましいです。
 

摂食障害

拒食症と過食症 があり,片方だけの場合も両方ある場合があります。摂食障害の背景に家族関係が存在していることもあり,先ず受診してください。食事のコントロールが出来ない場合には,連携病院を紹介し,適切な入院治療も紹介できます。
 

外傷性ストレス障害

 感受性が高く,傷つきやすい子どもにとって,虐待を受けた体験は深い傷を心に残します。それは大人になってからも,心の中に留まり影響を与える体験になります。また,不慮の事故,災害,犯罪,突然の死別に出会った子どもの中にはPTSDを発症する子もいます。詳細はクリック



 

子どもの喪失体験

 失うの対象は、大切な人、つまり祖父母、親,兄弟、友達かもしれません。ペットかもしれません。喪失は子どもにとっては辛い体験です。死別、離婚、何らかの理由での両親からの切り離し、転校、環境変化など・・・・・・喪失の内容はさまざまです。
 喪失体験は子どもの心を強くすることだってあります。ある女子医学生は、10歳の時に大切に飼っていた文鳥を目の前で失いました。助けてあげられなかったのです。しかし、彼女はその後、医師への道を志しました。

 

家庭内暴力

児童青年期の家族への暴力の場合、家族関係や自立や支配をめぐる問題もありますが、統合失調症や発達障害などが背景にあることも少なくないので注意が必要です。家族の問題、親の問題、子どもの性格の問題に還元する前に、精神的問題の判断が必要です。ご相談ください。